コラム

東洋のベネチア・バンコク:運河が紡ぐ歴史と現代の「水の都」を巡る旅

東洋のベネチア・バンコク:運河が紡ぐ歴史と現代の「水の都」を巡る旅
Hikasa

高層ビルの窓に反射する夕日、絶え間ない交通渋滞、そして街を埋め尽くすネオンサイン。現代のバンコクを象徴する風景の裏側には、かつてこの街が「東洋のベネチア」と謳われた時代の記憶が、今もなお血管のように張り巡らされた運河(クロン)の中に息づいています。

本稿では、世界的な「水の都」としてのバンコクの価値を再考し、歴史的な背景から、現在も市民の足として機能する運河ボートの活用術、さらには観光客がまだ知らない穴場の水上マーケットまでを徹底解説します。

第一章:なぜバンコクは「水の都」と呼ばれるのか? ―― その歴史と宿命

「東洋のベネチア」誕生の背景

1782年、チャクリー王朝の始祖ラーマ1世が、当時トンブリーにあった首都を対岸の現在のバンコク(ラッタナコーシン島)に移したとき、この街の設計図の中心にあったのは「水路」でした。チャオプラヤー川の大きな蛇行を利用し、国防のための外堀を掘り、さらにその内側に網の目のように運河を張り巡らせることで、物資の輸送と敵の侵入を防ぐ強固な都市を築き上げたのです。

19世紀にバンコクを訪れた西洋人たちは、道路がほとんどなく、人々が小舟で家々を行き来し、水上で商売を行う様子を見て、敬意を込めて「東洋のベネチア(Venice of the East)」と呼びました。当時のバンコクは、まさに水面に浮かぶ都市だったのです。

水と共に生きる知恵と信仰

タイの人々にとって、水は単なる交通路ではありませんでした。それは生命の源であり、信仰の対象でもありました。毎年11月の満月の夜に行われる「ロイクラトン(灯籠流し)」は、川の女神「プラ・メー・コンカー」に感謝を捧げる行事であり、今もなおタイで最も美しい祭りとして親しまれています。

また、運河沿いに建つ「高床式住居」は、毎年のように起こる雨季の増水を受け入れるための知恵です。自然を征服するのではなく、自然のリズムに合わせて暮らす。その柔軟な精神が、バンコクの独特な景観を作り上げてきました。

第二章:現代の「水の都」を体感する
―― 実用・運河ボート活用ガイド

現代のバンコクにおいて、運河ボートは単なる「観光の乗り物」ではありません。世界最悪とも言われるバンコクの渋滞を回避するための、最も効率的でエネルギッシュな公共交通機関です。

運河のボートを利用する通勤客の様子  出典元:タイムラインバンコク

センセープ運河ボート:バンコクの心臓部を駆け抜ける

バンコクの中心部を東西に貫くセンセープ運河(Khlong Saen Saep)。ここでは、水しぶきを上げながら疾走する乗り合いボートが、毎日数万人の通勤客を運んでいます。

  • 路線の特徴: 観光の中心地である「プラトゥーナーム」船着場を境に、西路線(パンファー・リーラート方面)と東路線(ワッタナー、ラムカムヘン方面)に分かれています。
  • 観光への活用: 西路線の終点「パンファー・リーラート」は、カオサン通りやワット・サケート(黄金の山)から徒歩圏内です。サイアム周辺のショッピングエリアから旧市街へ移動する際、タクシーなら1時間かかる距離を、ボートならわずか15分、10〜20バーツ程度で移動できます。
  • 乗る際の注意: ボートが船着場に近づくと、船員がロープをひょいと引っ掛けて固定します。その一瞬の隙に飛び乗るスリルは、バンコクならではの体験。水しぶきよけのビニールシートを引っ張り上げるのも乗客の役割です。

チャオプラヤー・エクスプレス:大河の風を感じる特等席

バンコクの母なる川、チャオプラヤー川を南北に結ぶのがこのボートです。船旗の色(オレンジ、イエロー、グリーン、ブルー)によって停泊する駅や料金が異なります。

  • オレンジフラッグ(通年運行): 観光客にとって最も使いやすい路線です。主要な観光地(ワット・アルン、ワット・ポー、王宮、アイコンサイアム)のすべてにアクセス可能です。
  • ブルーフラッグ(ツーリストボート): 英語のアナウンスがあり、デッキから景色を楽しめる観光専用ボートです。1日乗り放題券(150バーツ程度)もあり、ゆったりと川辺の景色を楽しみたい方におすすめです。
  • ディナークルーズ : 5つ星ホテルのシャングリラホテルが運営するホライゾンディナークルーズです。バンコクのリバーサイドの夜景を見ながらのディナービュッフェを楽しめます。
ナイトクルーズ 出典元:タイムラインバンコク

こちらの詳しい情報は、バンコクのディナー&夜の船旅! ホライゾンディナークルーズ⤴

第三章:喧騒を離れて
―― 知る人ぞ知る「穴場」の水上マーケット

多くのガイドブックが紹介する「ダムヌンサドゥアック水上マーケット」は非常に有名ですが、観光地化が進みすぎていると感じる人も少なくありません。そこで、よりローカルで「生きた水の都」を感じられる穴場のマーケットを厳選しました。

クロンラットマヨム水上マーケット(Khlong Lat Mayom)

バンコク市内にありながら、驚くほど静かで緑豊かな空間が広がるマーケットです。

  • 魅力: 観光客向けのお土産よりも、地元の人々が楽しむ「食」が中心です。水面に浮かぶテーブルで、採れたての野菜や豪快な塩焼き魚(プラー・パオ)を味わう時間は至福です。
  • 体験: 近くにある「オーキッド・ファーム(蘭園)」を巡るロングテールボートツアーも格安で楽しめます。

タリンチャン水上マーケット(Taling Chan)

BTSバンワー駅からタクシーでアクセス可能な、週末限定のマーケットです。

  • 魅力: 船の上で調理される「クン・パオ(焼きエビ)」が絶品。線路がすぐ近くを通っており、ノスタルジックな雰囲気が漂います。
  • ポイント: ここから出発するボートツアーは、細い運河を迷路のように進むため、かつてのバンコクの原風景を最も色濃く残す「トンブリー地区」の深部を覗き見ることができます。

バンナムプン水上マーケット(Bang Nam Phueng)

「バンコクの緑の肺」と呼ばれる中州、バーンカチャオにあるマーケットです。

  • 魅力: 水上マーケットと言いつつも、実際には緑豊かな公園のようなエリアに屋台が並びます。レンタサイクルを借りて、ジャングルのような小道を走り、疲れたらマーケットで冷たいハーブティーを飲む。都会の喧騒を完全に忘れることができます。

ダムヌンサドゥアック水上マーケット(Damnoen Saduak Floating Market)

観光スポットとして有名でガイドブックやテレビやメディア等で良く紹介される人気エリア。150年以上の歴史がある観光におすすめの水上マーケット、朝からお昼までのマーケットで、チャーターした船上からおみやげ屋やタイ料理をはじめ地元のスイーツのお店、タイ式コーヒーの屋台にトロピカルフルーツなどたくさんの水上のお店を観光します。近くには鉄道の通るメークロン市場やアンパワー水上マーケットもあります。船のチャーター代金は1200バーツ。最大で10名程は乗船できると思います。混雑時は待ち時間が出ることもあります。

ダムヌンサドゥアック水上マーケットの様子 出典元 : タイムラインバンコク

こちらの詳しい情報は、ダムヌンサドゥアック水上マーケット バンコク近くのおすすめ水上マーケット⤴

第四章:水の都の未来
―― 伝統と革新の融合

現在、バンコクでは「運河の再生」という大きなプロジェクトが動いています。かつてゴミで溢れ返っていた「オンアン運河(Khlong Ong Ang)」は、近年見事に清掃され、週末にはアートや屋台が並ぶ美しい遊歩道として生まれ変わりました。このプロジェクトはUNハビタット(国際連合人間居住計画)からも高い評価を受けています。

また、チャオプラヤー川沿いには「アイコンサイアム」や「アジアティーク」といった現代的な商業施設が並び、伝統的な寺院のライトアップと近代的な高層ビルの夜景が共存する、世界でも稀な「水の都市景観」を作り上げています。

結びに:あなたの「水の都」を見つけよう

バンコクが「世界〇大水の都」という数字で語られる必要はありません。なぜなら、この街における水は、単なる景観ではなく「生きるためのエネルギー」そのものだからです。

豪華なディナークルーズから、10円単位で乗れる庶民の運河ボート、そして水辺で暮らす人々の穏やかな笑顔。それらすべてが組み合わさって、世界で唯一の、そして最も活気ある「水の都バンコク」を構成しています。

次にバンコクを訪れる際は、ぜひ地図を広げ、一本の「青い線」を探してみてください。そこには、コンクリートのジャングルだけでは決して語りきれない、この街の本物の物語が流れているはずです。

付録:観光に役立つチェックリスト

  • 服装: ボートの乗り降りは足元が不安定なため、サンダルよりも滑りにくい靴が推奨です。
  • 時間帯: 運河ボートの通勤ラッシュ(朝7〜9時、夕方17〜19時)は、現地の熱気を感じられますが、非常に混雑するため、観光なら日中がおすすめ。
  • 持ち物: 水しぶきから電子機器を守るためのビニール袋、そして日差しを遮る帽子は必須です。
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ABOUT ME
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CKMA ペンギンウォーター編集部
CKMA ペンギンウォーター編集部は、バンコクで浄水器レンタル事業に携わる専門チームです。 浄水器を通じて「安心して飲める水の大切さ」を広めることを使命とし、日々現場に立ちながら正確で価値のある情報発信を行っています。 編集部のメンバーは、バンコクでの暮らしに密着し、インターネット上の情報だけに頼らず、実際に現地を歩き、お客様の声に耳を傾けながら取材・調査を重ねています。 その活動の中で、過去には大規模な洪水も経験しました。当時は多くの地域で水が不足し、安心して飲める水を届けるために、3か月間休みなく対応に追われたこともあります。 この経験は「清潔で安全な水の価値」を一層強く実感し、現在の活動にも深く息づいています。 CKMA ペンギンウォーター編集部は、暮らす人・訪れる人にとって信頼できる情報とサービスを届けることを信条としています。 ペンギンキャラクターと共に、透明で爽やかな水のように、皆さまの生活に寄り添う存在であり続けます。
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